ふくしま桜旅

福島県内の桜の名所・名木を紹介します

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福島県は一本桜の大木数が日本一。その魅力を伝えるため番付表を作成

桜の手入れを行っている保護団体の方、桜の写真を撮影しているカメラマンさんなど、福島県内の桜にさまざまな形で関わる人を取材しました。

今回は、毎年「福島県内『1本桜』番付表」を作成している「桜を愛するアマチュアカメラマンの会」代表の戸井田楽桜(らくおう)さんにお話を伺いました。

<目次>

写真写りの良さ、樹齢100年以上、周辺整備などが選考基準

福島県は、一本桜の大木の数が日本で一番多い県なんです」。そう話すのは「桜を愛するアマチュアカメラマンの会」代表で、全日本写真連盟総本部理事の戸井田楽桜さんです。

福島県の一本桜の素晴らしさをみんなに知ってもらうにはどうしたらいいかと考え、『福島県には日本三大桜の一つ・三春滝桜があるから番付表を作ろう』と、2000年から福島県内『1本桜』番付表を作り始めました」

当初は戸井田さんお一人で番付表を作成していましたが、2008年に「桜を愛するアマチュアカメラマンの会」を設立。現在は県内の各写真クラブの会長さんら6人が選定委員となって毎年11月に番付編成会議を行い、12月に印刷、翌年3月にその年の番付表を発表しています。

番付を決める選定基準は下記のとおりです。

  1. 写真写りが良いこと(樹勢、色彩、樹高など)
  2. 一本桜であること(数本でも一塊、一本に見えれば可)
  3. 樹齢100年以上であること(古ければ良いものではない)
  4. 地面から120~130cmの幹周囲が3m以上(または直径1m以上)であること
  5. 桜の種類は問わない
  6. 一本桜の周辺がきれいに整備されていること
  7. 地元の方々の桜を愛する思いが強いこと(保存会・愛する会等がある)
  8. 駐車スペースがあること(路上駐車して地元の迷惑にならないようにするため)

2000年の番付以来不動の横綱となっているのが、東の横綱「三春滝桜」(三春町)、西の横綱「紅枝垂地蔵桜」郡山市)。2019年からは樹齢400年のヤマザクラ「越代(こしだい)の桜」古殿町)が東の新横綱となっています。

2023年版の「福島県内『1本桜』番付表」では、田村市の「是哉寺(ぜさいじ)地蔵桜」と郡山市の「天神夫婦桜」が新入幕を果たし、合計69本の一本桜が番付表に名を連ねています。

「相撲の番付表は縦書きですが、若い方には読みづらいんですね。若い方にも福島県の一本桜の魅力を知っていただきたくて、わかりやすい横書きの番付表にしています」と、戸井田さんは笑顔で話します。

福島県に日本で一番一本桜の大木が多い理由とは

母方の祖父が写真館を経営していたこともあり、幼い頃からカメラをおもちゃにしていたという戸井田さん。大学生のときに本格的に写真撮影を始め、三春滝桜を見に行った際に圧倒されて一本桜の魅力に気づいたそうです。社会人になってからも趣味でカメラを続け、現在は写真クラブや公民館の講座、老人会などで写真撮影の講師を務めています。

福島県は一本桜の大木数が日本一多い」というのは、戸井田さん自身が体験に基づいて実感したものだといいます。

「以前、特別養護老人ホームの施設長をしており、全国各地で開かれる施設長会議に出席した際に、そのエリアの一本桜の大木をめぐるということを15年ほど続けました。その結果『福島県の一本桜の数は確実に日本一だ』と実感し、日本一を表明しています」

福島県に一本桜が多いのはなぜなのでしょうか。その理由を戸井田さんはこう推測します。

「まず第一に四季がはっきりしていること。それほど寒くもなく、暑くもない気候が桜の生育に適していたんじゃないかと思います。また、阿武隈高地をはじめ中程度の山や丘陵地帯が多く、小さな盆地のような地域が多いこともプラスになっているのではないでしょうか。

また、三春滝桜があることの影響も大きいでしょう。『うちの庭にも植えたい』と、三春町の周囲に滝桜の子孫が増えていった。実際、柳沼吉四郎氏と木目沢伝重郎氏という方が昭和39年から10年かけて旧田村郡内を調査し、400本以上の滝桜の子孫の大木を探し当てました。こうしたことから、福島県に一本桜の大木が日本一多いのだと思います」

多くの人に福島県の一本桜を愛してほしいとの想いで発行

戸井田さんのもとには「この桜を福島県内『1本桜』番付表に載せてほしい」という自薦他薦が毎年多数寄せられ、それらすべてを実際に見に行くそうです。このため名もなき桜も含めると、これまでに500カ所近くの県内の一本桜をめぐったといいます。そんな戸井田さんが感じる、福島県の一本桜の魅力はどこにあるのでしょうか。

「一本桜は、町外れの高台や墓地にあることが多いんですね。墓地に桜を植える風習は全国にはあまりなく、ご先祖にも桜を楽しんでもらいたいという福島県人のやさしさを私は感じます。また、町外れの高台に桜を植え、みんなで見て楽しむことで、寒い冬を越えて春が来た喜びを分かち合う、そこにも福島県人の心やさしい想いを感じますね」

たくさんあるという好きな福島県内の一本桜の中で、戸井田さんの思い入れが特に強いのが二本松市の道の駅「安達」智恵子の里下り線に立つ「万燈桜(まんとうざくら)」(2023年版番付表・西前頭11枚目)です。

福島県二本松市にある「万燈桜」。戸井田楽桜さん撮影

「道の駅が建設されるときに万燈桜を切り倒すという噂が出ました。その頃たまたま出演したテレビのインタビューで『これは立派な桜だから切ってはかわいそうです』と言ったんです。その後、アナウンサーの方が何度かテレビで言及してくれて、そのためかどうかはわかりませんが、切られることなく敷地内に残されたという思い出があります」

道向かいの道の駅「安達」智恵子の里上り線から撮影すると、残雪の安達太良山をバックにのびのびと立つ万燈桜をとらえることができますが、戸井田さんのおすすめは下り線の敷地内での撮影だそう。

「万燈桜の南側にクローバーが群生しているので、寝転がってクローバーを入れて桜を狙うと青空がきれいに入ります。ぜひ試してみてください」

また、田村市の「松岳寺のしだれ桜」(2023年版番付表・東前頭5枚目)も好きな一本桜の一つだといいます。「これはまず花の色がいいですね。しだれが下まで来てバランスがいいですし、お堂の赤い屋根との組み合わせも絵になります」

福島県田村市にある「松岳寺のしだれ桜」。戸井田楽桜さん撮影

ほかにも二本松市の「中島の地蔵桜」(2023年版番付表・西の関脇)、棚倉町の「花園しだれ桜」(同・東の小結)、大玉村の「相応寺のしだれ桜」(同・西前頭5枚目)、福島市の「芳水の桜」(同・東前頭8枚目)、会津美里町の「馬ノ墓の種蒔桜」(同・西前頭7枚目)、福島市の「慈徳寺の種まき桜」(同・東前頭13枚目)などなど、戸井田さんおすすめの一本桜は多数あります。

2023年で23回目の発行となった「福島県内『1本桜』番付表」。震災・原発事故後は「実際に福島県に足を運び、みんな普通に生活していることを知ってもらい、風評払拭につなげたい」という想いで発行を続け、全日本写真連盟関係者など県外の方にも発送しました。

「多くの方に福島県の一本桜を見ていただき、愛していただきたいという想いで発行を続けています。私有地にある桜も多いので、必ずマナーを守って撮影や観賞をしてほしいですね」と戸井田さん。

地球温暖化が桜にもたらす影響や、桜や桃などに寄生して幼虫が木の内部を食い荒らす外来種のカミキリムシの被害など、福島県の一本桜にとって心配な問題もありますが、これからもずっと見守っていきたいですね。また、福島県にはまだ知られていない素晴らしい一本桜があります。そうした名もなき桜を見つけたいなと思っています」と今後の夢を語ります。

福島県内『1本桜』番付表」は県内の道の駅などに置いてあるほか、下記からもダウンロードできます。ぜひ参考にして福島県の一本桜をめぐり、その魅力に触れてみてくださいね。

<2023年5月19日取材>