ふくしま桜旅

福島県内の桜の名所・名木を紹介します

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しだれ桜の宝庫・福島県への来訪を願ってつくる「枝垂れ桜花番付」

桜の手入れを行っている保護団体、桜番付を作成している団体など、福島県内の桜にさまざまな形で関わる人を取材しました。

今回は、毎年「枝垂れ桜花番付」を作成している郡山観光交通株式会社「社内桜審議委員会」会長代行の瀬谷和美さんにお話を伺いました。

<目次>

 

2003年から番付表を作成し、毎年100本のしだれ桜を掲載

福島県郡山市に本社を構える山口タクシーグループの郡山観光交通株式会社には、グループ会社内の桜好きが集まる「社内桜審議委員会」があります。

毎年1月に福島県内のしだれ桜を対象にした番付を決める審議委員会を開き、3月に「枝垂れ桜花番付」を発表。2023年で22回目となり、不動の横綱である東の横綱三春滝桜」、西の横綱紅枝垂地蔵ザクラ」から東西の前頭40枚目まで、合計100本のしだれ桜を紹介しています。

「弊社が『枝垂れ桜花番付』の作成を始めたのは2003年。貸切タクシー部のスタッフ3人が『福島県にはこれだけ多くのしだれ桜があるのだから、自分たちで紹介して、桜の時期にたくさんのお客様に来ていただきたい』と考え、各地を走りながら県内のしだれ桜リストをつくり、第一回番付表を作成しました」

そう話すのは社内桜審議委員会会長代行で、バスツアーなどを手掛ける「孫の手トラベル」チーフマネジャーの瀬谷和美さんです。

福島県内にはエドヒガンやヤマザクラなどの一本桜もありますが、しだれ桜だけに絞った理由は「やはり三春滝桜の存在が大きいですね。滝桜の子や孫がたくさんあることも理由です」と瀬谷さん。

第一回番付表を作成した3人のスタッフも、県内のしだれ桜について調べるうちに、柳沼吉四郎さんと木目沢伝重郎さんという方が昭和39年から10年かけて行った滝桜の子孫調査に辿り着きました。その資料で旧田村郡内には滝桜を中心とした半径10km以内に、根回り1m以上のしだれ桜が400本以上あるとわかり、「やはりしだれ桜の番付表をつくって県内外に広く紹介しよう」と決意したといいます。

枝ぶりなどを確認して番付を決定。知る人ぞ知る穴場も紹介

現在、社内桜審議委員会のメンバーは10人ほど。タクシーやバスのドライバー、孫の手トラベルのスタッフなど、グループ会社のさまざまな部署の桜好きが集まっています。

番付表に載せるのは、幹回り1m以上で樹齢100年以上のしだれ桜が対象。開花時の景観や周辺環境、駐車場の有無、桜を育てている人や守っている人たちの熱意などを考慮して番付を決めています。

番付決定にあたっては、審議委員会のメンバーが実際に桜を見に行き、枝ぶりや周辺環境などを確認するそうです。

「桜のシーズン中は繁忙期でなかなか見に行けないので、それ以外の時期に枝ぶりを見に行き、開花時の写真と見比べて枝折れなどがないか確認します。また、きちんと手入れされていると、春にきれいな花を咲かせてくれますので、周辺の手入れ状況なども見ますね」と瀬谷さん。

現在の番付表には合計100本のしだれ桜が紹介されていますが、福島県内にはまだまだ見応えのあるしだれ桜が多数あるといいます。

「ドライバーは穴場の桜をたくさん知っているので、審議委員会で『これどうかな』と情報を出してきます。それをもとにメンバーで話し合い、番付下位の桜を毎年少しずつ入れ替えています」

 

「枝垂れ桜花番付」が福島県を知る入り口になれば嬉しい

福島県内に多数点在するしだれ桜の魅力について、瀬谷さんはこう話します。

「しだれ桜は寿命が長く、樹齢200年、300年という桜がたくさんあります。樹齢500年を超えるしだれ桜もあり、太い幹にきれいな花を咲かせるのが魅力ですね。

また、ソメイヨシノは大きさの違いくらいしかありませんが、しだれ桜は幹の形も太さも長さも、しだれている形も違います。一本一本個性があるところが私は好きで、ツアーに参加されるお客様にも『ご自分の好みの桜を見つけてください』とお話ししています」

そんな瀬谷さんが特にお気に入りだというのが、三春町の「福聚寺(ふくじゅうじ)桜」(第22回「枝垂れ桜花番付」令和5年春場所・東の大関)です。

「私は形がちょっと変わっているしだれ桜が好きなんです。福聚寺さんの桜は傘がいくつも乗っているような形で花が咲くんですよね。本堂の脇の辺りからだと、雲が重なっているような桜が真正面に見えてきれいですよ」

また、郡山市中田町の「五斗蒔田(ごとまきた)桜」(第22回「枝垂れ桜花番付」令和5年春場所・東の前頭筆頭)も好きな桜だそう。

「丘の上にあるしだれ桜で、下から見るとちょっと斜めに立っている感じが髪の毛が流れている女性の横顔のように見えるので、弊社では“丘の上のビーナス”と呼んでいます。樹齢150年とまだ若い木ですが、意外と幹が太くて、幹の下のほうまでしだれているので、花が咲いたときには本当にきれいです。丘の上に登ると安達太良山が見え、木の下に馬頭観音もあるので、バスツアーでも極力お客様に丘の上まで登っていただいています」

たくさんあるお気に入りのしだれ桜の中でも、やはり「三春滝桜」は特別な存在だと瀬谷さんは話します。

「貸切タクシーのドライバーに聞いたんですが、花が咲いていない時期に『滝桜に行きたい』というおばあさんをお連れしたところ、太い幹と枝を見て『力をもらった』とすごく喜んでくださったそうです。

また、日本三大桜に数えられている山梨県の『山高神代桜』、岐阜県の『根尾谷淡墨桜』も見てきた方が、三春滝桜を見て『こんなに花がきれいに咲いているとは思わなかった。滝桜が一番だね』とおっしゃることが多いんです。こうしたお話を聞くと嬉しいですし、やはり三春滝桜福島県の自慢だと思いますね」

三春滝桜を筆頭に見応えのあるしだれ桜が多数点在する福島県。「第一回のときから変わらず、ぜひ見に来ていただきたいという気持ちで『枝垂れ桜花番付』を作成しています。毎年楽しみに待ってくださっている方もいるので、自分たちが実際に見てきた情報で、毎年少しずつ番付を入れ替えてリフレッシュさせることを心がけています」と瀬谷さん。

「まだ原発事故の風評が残っているのが現状ですが、福島県には三春滝桜をはじめしだれ桜がたくさん咲きますし、春夏秋冬いろいろな見どころがあります。浜通りも復興が進み、どんどん変わってきています。この『枝垂れ桜花番付』が福島県を知る入り口となり、実際に福島県に遊びに来てくださればと願っています」

郡山観光交通株式会社・社内桜審議委員会の皆さんの想いが詰まった「枝垂れ桜花番付」は、孫の手トラベルのホームページからダウンロードできます。ぜひ参考にして福島県に足を運び、しだれ桜めぐりをしてみてくださいね。

孫の手トラベル:

magonotetravel.co.jp

<2023年6月14日取材>

 

2024年3月22日更新:令和6年度 第23回「枝垂れ桜花番付」を掲載しました

新入幕の桜もありますよ。

下記からダウンロードしてご活用ください♪

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