ふくしま桜旅

福島県内の桜の名所・名木を紹介します

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清流沿いの桜並木を照らし出すカラフルな“七色LEDライトアップ”

桜の手入れを行っている保護団体、桜番付を作成している団体など、福島県内の桜にさまざまな形で関わる人を取材しました。

今回は、猪苗代町にある「観音寺川の桜並木」で幻想的な“七色LEDライトアップ”を実施している猪苗代町商工会青年部の皆さんを紹介します。

<目次>

埼玉県吉見町との縁で2015年からライトアップを開始

福島県のシンボル・磐梯山の南麓にある猪苗代町。町内を流れる観音寺川の両岸約1kmに、約200本のソメイヨシノやしだれ桜が咲き誇ります。「観音寺川の桜並木」は例年ゴールデンウィーク期間中に見頃を迎える、福島県を代表する桜の名所の一つです。

さらさらと流れる清らかな水、野の草花が生い茂る緑の土手、そして川岸を彩る美しい桜。まさに日本の春の原風景のような場所ですが、夜になるとライトアップされ、一転して幻想的な光景が広がります。ただのライトアップではありません。多彩な色のライトで桜をカラフルに照らし出す、その名も“七色LEDライトアップ”が行われているのです。

七色LEDライトアップを実施しているのは、猪苗代町商工会青年部の皆さんです。開花期間中に開催される「観音寺川桜まつり」に合わせ、桜まつり駐車場付近の上流部で行っています。

七色LEDライトアップが始まったのは2015年4月。そのきっかけは、埼玉県吉見町で行われている桜のライトアップを猪苗代町商工会青年部で視察に行ったことだそうです。猪苗代町商工会青年部OBで、町内で電気工事業を営む吉野貴之さんが当時のことを教えてくれました。

「埼玉県出身で、結婚して猪苗代に住んでいる野本真吾さんという方がいるんですが、彼の友達が吉見町の商工会青年部で桜のライトアップをしていたんです。『おもしろいライトアップをやっているから、一回視察に来てみたら?』となり、2015年4月に猪苗代町商工会青年部の有志を募って吉見町に視察研修に行きました。そのライトアップがまさにこの七色LEDライトアップだったんです」

「吉見町のライトアップは白や黄色など単色で照らしているだけだったんですけど、先方の担当の山田さんが『実はこれ、いろんな色に変えられるんだよ』と教えてくれました。試しに点灯してもらったら河川敷が七色に輝き出して、野本さんと『これを観音寺川でやったら、めちゃめちゃきれいだよね』と盛り上がり、急きょ『今年観音寺川で七色のライトアップをやろう!』という話になりました」

とは言っても資金もLEDライトもないので、猪苗代町よりも早く桜シーズンが終わる吉見町にお願いして格安で機材を借りることにしたそうです。

「商工会青年部やOBに声をかけて協賛金を募り、10万円でLEDライトやケーブルなどをすべてレンタルしました。吉見町から山田さんに来てもらって13台のライトを設置し、初めて七色LEDライトアップを行いました」と、吉野さんは振り返ります。

七色LEDライトアップで照らし出された観音寺川の桜並木を実際に見て、猪苗代町長や猪苗代町役場商工観光課の担当者たちもその美しさに感動。翌年から町の補助金を活用し、2016年にLEDライトを15台、さらに2017年に15台購入し、現在は30台のLEDライトを使ってライトアップを行っています。

30台のLEDライトの多彩な色をコンピュータで制御

七色LEDライトアップの準備は、観音寺川桜まつりの前に吉野さんの指揮のもと、猪苗代町商工会青年部の皆さんで行います。

30台のLEDライトは観音寺川上流に向かって右側の河川敷に並べ、交互に向きを変えて両岸の桜を照らします。桜の開花具合に合わせて、照らし出す角度を調整。ライトアップ期間中は商工会青年部の皆さんが当番制で毎日やってきて、見回りや調整を行っています。

LEDライトはコンピュータで制御して色を変え、幻想的な光景をつくり出します。プログラミングを行うのも吉野さんですが、実はこのライトアップを始めるまでプログラミングをしたことはなかったそう。「吉見町のライトアップを行っていた山田さんに教わり、見よう見まねで始めました」と笑います。

「プログラミングによって、例えばライトを1個ずつ点滅させることもできるし、グラデーションで徐々に明るくなり、また暗くなるといったこともできます」と、今ではすっかりお手のもの。さまざまなパターンを組み合わせて約30分のプログラミングをつくり、光と色彩の演出を行っています。ちなみにプログラミングは毎年同じではなく、写真愛好家の方の要望などを取り入れて翌年から変わることもあるのだそうです。

唯一無二のカラフルなライトアップで地域を元気に

幻想的な美しさがSNSなどで評判を呼び、今では県内外から多くの観桜客が七色LEDライトアップを目当てに観音寺川の桜並木を訪れるようになりました。「ライトアップの時間帯だけで5万人くらいのお客様が足を運んでくださっています」と話すのは、猪苗代町商工会青年部部長の氏家利康さんです(下写真・右)。

「川の両岸に桜並木があるので、ライトアップをすると川面に光が反射してすごく幻想的な風景になるんです。川幅もちょうどよく、流れもあまり早くないからゆったりと時間が流れる感じがします。他の場所でライトアップをしても、この雰囲気にはならないですよね。観音寺川の桜並木と七色LEDライトアップは、商工会青年部にとってすごい財産だと思っています」(氏家さん)

吉野さんも続けます。「吉見町でライトアップを見たときに『観音寺川でやりたい!』となったのは、このロケーションに絶対に合うと思ったからなんです。観音寺側は川幅が狭くて、両側を照らすことができる。川幅が広いとそれができないんです。七色LEDライトアップは観音寺川だからできる、唯一無二のライトアップだと思います」

今後について氏家さんと吉野さんはこう話します。

「OBの吉野さんや野本さんがいたおかげで、商工会青年部として七色LEDライトアップを企画し、猪苗代町全体にお客様が来るようになりました。それを誇りに思いますし、先輩方の姿を見ていて今後も継続してやっていくべきだと考えています。もっとお客様を猪苗代町に呼び込めるよう、七色LEDライトアップをさらにPRしていきたいですね」(氏家さん)

「これからも飽きられないように、毎年ちょっとずつ工夫しながらライトアップを続けていければと思います。後輩の商工会青年部のみんなが協力してやっていければ、青年部自体の活気にもつながります。そんなライトアップになればいいですし、地域の方たちも元気づけられるような事業になればいいなと思います」(吉野さん)

七色LEDライトアップは、観音寺川桜まつり期間中の18時30分から22時に行われています。ぜひ観音寺川の桜並木に足を運び、猪苗代町商工会青年部の皆さんの想いが詰まったカラフルで幻想的なライトアップを楽しんでくださいね。

<2023年4月13日取材>

観音寺川の桜並木
■所在地:福島県耶麻郡猪苗代町川桁
■例年の見頃:4月下旬

■問い合わせ先:猪苗代観光協会 TEL:0242‐62-2048
■ホームページ

観音寺川の桜 | 猪苗代観光協会【公式ホームページ】

※記事中の見頃は例年のものです。気象条件などにより時期が前後することがありますので、最新情報をご確認のうえお出かけください。

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観音寺川の桜並木MAP