ふくしま桜旅

福島県内の桜の名所・名木を紹介します

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カタクリの絨毯とオオヤマザクラの天蓋が美しい地域の“宝の山”

桜の手入れを行っている保護団体の方、桜番付を作成している団体など、福島県内の桜にさまざまな形で関わる人を取材しました。

今回は、カタクリとオオヤマザクラの共演が楽しめる三島町の「大林ふるさとの山」を管理している「西方共有財産管理会」の皆さんの取り組みを紹介します。

<目次>

かつてのキャンプ場が福島県内有数のカタクリ群生地に

8ヘクタールの山の斜面を埋め尽くす紫色のカタクリの絨毯。その上を約400本のオオヤマザクラの濃いピンク色の花が天蓋のように彩ります。福島県会津三島町西方(にしかた)地区にある「大林ふるさとの山」は、タイミングが合うと“春の妖精”カタクリとオオヤマザクラの美しい共演が楽しめる、なんとも贅沢なスポットです。

「『カタクリだけじゃなく桜も一緒に見られるから、ここは日本で一番いい』なんて言ってくれるお客さんもいるんですよ」。そう笑顔で話すのは、大林ふるさとの山を管理している「西方共有財産管理会」前会長の坂内(ばんない)洋二さんです。西方共有財産管理会は西方地区住民104人で構成され、環境整備やオオヤマザクラの植樹など、一年を通して大林ふるさとの山の整備・管理を行っています。

坂内さんによると、この一帯はもともと栗林だったのだそうです。「俺が中学生の頃はここに栗拾いに来て、それを売って生徒会の資金にしていたんだ(笑)。でも、昭和40年代に入ったらクリタマバチの寄生で栗の木が枯れてしまい、相談の結果、栗の木を全部切ってしまった。その後、昭和40年代後半から町が公園として開発することになり、キャンプ場やアスレチックコースをつくったんです」

オオヤマザクラもそのときに植樹し、昭和48年12月に仮植、翌49年春に本格的に植えたといいます。カタクリも当時から至るところに自生していましたが、坂内さん曰くそこまで目立ってはいなかったのだとか。その後、西方共有財産管理会が7月と9月の年2回、草の刈り払いを行うようになってから株が増え、現在のように福島県内でも有数のカタクリ群生地となったのだそうです。

平成8年ごろまでキャンプ場として営業していましたが、現在はカタクリ群生地とオオヤマザクラ、桐畑が広がる自然豊かな場所となっています。花の時期には西方地区と西方共有財産管理会、三島町の共催で「カタクリさくらまつり」を開催し、県内外から多くの観桜客が訪れています。

地域住民がオオヤマザクラの植樹や環境整備に尽力

現在、西方共有財産管理会では新しいオオヤマザクラの植樹にも力を入れていると坂内さん。「最近、枝折れや枯れた木が増えてきているので、この景観を守るためにオオヤマザクラを植樹しています」。ただ、雪国・奥会津ならではの苦労があるそうで、「苗木が小さいと雪でやられてしまうので、雪に負けないある程度の大きさのものを植えています」といいます。

また、開花シーズンの前には雪などで折れたり枯れた桜の枝の片付け、散策路のロープ張り、清掃などをして観桜客を迎える準備を行っています。さらに「カタクリさくらまつり」開催期間中は、坂内さんはじめ会員の皆さんがボランティアガイドとして観桜客へ見どころの案内をしています。

地区住民が主体となってオオヤマザクラの管理・保護・育成に努めていることが評価され、西方共有財産管理会は平成31年3月、日本さくらの会の「さくら功労者」に選ばれました。

「ここは西方地区の宝の山なので、これからも大切に育てていかなくちゃいけないと思っています。カタクリとオオヤマザクラがこれほどのところは他にないだろうから、大林ふるさとの山は俺の山だという感じで(笑)大事にしていきたいですね」と、坂内さんは話します。

逆光のカタクリや花の色の違いなど見どころ満載

坂内さんに大林ふるさとの山の見どころを尋ねると、地元の方ならではのポイントをたくさん教えてくれました。

「オオヤマザクラカタクリの斜面に日が当たってきれいに見えるので、おすすめの時間帯は午前中。ただ、個人的に好きなのは15時ごろ。斜めの光が差し込んで、逆光でカタクリの花が透けて見えるのが好きなんです。だから、しょっちゅう一日この辺で遊んでるんですよ(笑)」

坂内さんがおすすめする大林ふるさとの山の見どころはまだまだあります。「ひと口にオオヤマザクラと言っても、よく見るとちょっとずつ違うんだよね。花の色が薄いものや赤みが強いもの、咲き方もソメイヨシノみたいに花がまとまって咲くものとか、単発でパッパッと咲いているものとか、いろいろと違いがあるんです。

カタクリの花の紫色にも濃いもの、薄いものとか、よく見るといろんな色があります。たまに白い花もあって、ここの一番上の斜面にも白いカタクリがあるんですよ。そんな違いも見ながら『これ写真撮ろう、あれ写真撮ろう』なんてやってると、本当にあっという間に時間が経っちゃうんだよね」と、坂内さんは笑います。

西方共有財産管理会の皆さんが大切に守り育てている大林ふるさとの山。坂内さんのお話のとおり、美しいカタクリとオオヤマザクラの共演は一日見ていても飽きません。ぜひたっぷり時間を取って、ゆっくりと楽しんでくださいね。

<2023年4月8日取材>

大林ふるさとの山
■所在地:福島県大沼郡三島町大字西方字大林地内
■例年の見頃:4月中旬~下旬
■問い合わせ先:三島町観光協会 TEL:0241-48-5000
■ホームページ

大林ふるさとの山(おおばやし) - 三島町観光ポータルサイト

大林ふるさとの山MAP