ふくしま桜旅

福島県内の桜の名所・名木を紹介します

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地域住民が植えた108本のしだれ桜。今では艶やかな桜のトンネルに

桜の手入れを行っている保護団体の方、毎年桜の番付表を作成している団体の方など、福島県内の桜にさまざまな形で関わる人を取材しました。

今回は、福島市にある「右輪台山(うわだいやま)のしだれ桜」を植樹した「水原の右輪台山のしだれ桜を育てる会」の皆さんの取り組みを紹介します。

<目次>

地域を“花の里”にする活動の一環でしだれ桜を植樹

福島県福島市郊外、松川町水原地区にある「右輪台山のしだれ桜」。小高い丘を通る道路の両側約300メートルにわたって108本のしだれ桜が咲き誇り、濃いピンク色の艶やかなトンネルが続きます。

「『喜多方(日中線しだれ桜並木)まで行かなくても、近くにこんなに素晴らしいところがあるって初めて知った』というお客さんがいっぱいいるんです」。そう目を細めるのは、水原地区の関北(せきほく)町内会会員で構成される「水原の右輪台山のしだれ桜を育てる会」会長の丹野政光さんです。

丹野さんたちがこの場所にしだれ桜を植えたのは1999年3月。過疎化が進む水原地区に活力を呼び戻そうと1992年に発足した組織「活性化集団水原21」による事業の一環でした。

「俺も、活性化集団水原21のこの地区の理事をしていました。単年度で芸能祭をやったり、地域の風景を撮影してふるさとカレンダーを作ったり、いろんなことをやっていたんですが、やはり将来を見据えた事業に取り組んだほうがいいとなりました。それで水原地区といえばなんだと考えたときに、緑が多い自然豊かなところなので、花を植えて水原を“花の里”にしようじゃないかとなったんです」

そして福島県地域づくりサポート事業の指定を受け、三年計画で「みずはら花の里づくり」事業を展開。その初年度にしだれ桜の苗木1,000本を用意し、水原地区のすべての家庭に配布して植えてもらったほか、神社仏閣や集会所、公園などにも植樹しました。その際に余った苗木を関北町内会が譲り受け、右輪台山に植えたのだそうです。

「もともとここは養蚕が盛んな地域で、右輪台山の道路の両側も桑畑だったんです。お蚕様が衰退してからは草が伸び放題になっていたので、地権者の方に了解を得て整備をして、しだれ桜を植えさせてもらいました」

小さかった苗木も、今では見事なしだれ桜並木に成長。テレビや新聞、雑誌などで紹介されてここ数年で知名度が急上昇し、今では県内外から多くの観桜客が訪れる人気スポットとなっています。

「もともと自分たちがここで花見をやっぺということで桜を植えたので、他の人に見せっぺということはさらさら考えなかったんです。本当は黙って隠しておいたらよかったな(笑)」と、丹野さんはいたずらっぽく笑います。

枝の剪定も会員の手で行い、開花中はライトアップも

水原の右輪台山のしだれ桜を育てる会では、しだれ桜並木の美しい景観を守るために草刈りや枝の剪定などの手入れを行っています。

「最初に造園業をしている方に指導していただいて、『こういう枝は切ってください。切った後は切り口に防腐剤を塗ってください』と教えてもらいました。今は毎年3月の彼岸前に、会員たちで枯れた枝や通行の邪魔になる枝などの剪定を行っています」と丹野さん。

開花前には看板や幟を設置したり、近くの竹林から竹を切り出して駐車場の車止めにするなど、会員の皆さんが観桜客を迎える準備を行います。

また、開花期間中は道路が一方通行となるので、手分けして車の誘導などを行っています。

さらに開花期間中は会員の皆さんが手づくりした行燈(あんどん)を灯し、夜桜を楽しめるようにしています。ライトアップの時間は18時から21時。行燈の明かりに浮かび上がるしだれ桜並木の幻想的な美しさは格別です。

水仙や残雪の安達太良山と桜の共演が見どころ

しだれ桜並木の下には水仙が植えられており、その共演も右輪台山のしだれ桜の見どころの一つです。「水仙は、老人会の方々に協力していただいて球根を植えてもらいました。ちょうど桜が咲く時期と一致して見事なんですよ」と、丹野さんも太鼓判を押します。

もう一つ、丹野さんがぜひ見てほしいとおすすめするのが、しだれ桜並木の西側に見える残雪の安達太良山です。「この時期の安達太良山はまだ雪をかぶった状態で、青空と桜に映えるんです。個人的にはその風景が好きですね。満開や桜吹雪の頃もいいけど、桜が七、八分咲きの頃は本当に“ベニシダレ”という感じで、ピンク色がきれいで映えますね」

以前はしだれ桜並木の間に安達太良山が見えていたそうですが、現在は木が成長してトンネル状になっているため見えなくなっています(幹の間から垣間見ることはできます)。ただ、駐車場から残雪の安達太良山とともに咲き誇るしだれ桜を見ることができるので、ぜひチェックしてみてくださいね。

ちなみに安達太良山の反対側、しだれ桜並木の東側には“UFOの里”として知られる福島市飯野町の千貫森(せんがんもり)が見えるそう。そちらも写真撮影におすすめとのことなので要チェックです。

「右輪台山のしだれ桜は水原地区の宝物です。クマガイソウの自生地とか他にも水原にはいろいろ宝物があるんですけど、しだれ桜も自慢の一つだね」と丹野さん。「守っていくのは大変だけど、できるかぎりやって、あとは次の世代にバトンタッチできればと思っています」。丹野さんたちはこれからも、“花の里”水原の宝物・右輪台山のしだれ桜を守り育てていきます。

<2023年3月27日取材>

右輪台山のしだれ桜
■所在地:福島県福島市松川町水原字右輪台地内
■例年の見頃:4月中旬~下旬
■問い合わせ先:松川町観光協会 TEL:024-567-2111
■ホームページ

右輪台山のしだれ桜 – 松川町観光協会

右輪台山のしだれ桜MAP