ふくしま桜旅

福島県内の桜の名所・名木を紹介します

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大好きな福島の桜の魅力を伝えたいと撮影スポットを案内する本を出版

桜の手入れを行っている保護団体の方、毎年桜の番付表を作成している団体の方など、福島県内の桜にさまざまな形で関わる人を取材しました。

今回は、福島県内の桜スポット214カ所をまとめたガイドブック『なみちゃんが歩いた撮影スポット 福島桜旅214』(日本写真企画発行)を2024年2月14日に出版した酒井なみさんを紹介します。

全214カ所の地図が表示されるQRコード付きで桜めぐりに便利!

「この本は自分が欲しかったんです(笑)。こういう本があったら便利だよねという思いがあり、自分のために作りました」。そう笑顔で話すのは、『なみちゃんが歩いた撮影スポット 福島桜旅214』の著者・酒井なみさんです。

酒井さんはニッコールクラブ郡山支部長を務めており、郡山市内で長年写真教室の講師をしています。数々のフォトコンテストで入賞経験があり、「『写真の日』記念写真展2023」では最高賞の外務大臣賞を受賞した実力の持ち主です。

風景、スナップ、祭り、人物などさまざまな写真を撮るそうですが、なかでも大好きだと話す被写体が福島の桜。毎年開花を心待ちにして撮影に出かけているといい、「桜を愛するアマチュアカメラマンの会」が作成する「福島県内『一本桜』番付表」の選定常任委員も務めています。

そんな酒井さんが出版した『なみちゃんが歩いた撮影スポット 福島桜旅214』には、タイトルのとおり福島県内の214カ所の桜スポットがこれまで撮り溜めた美しい写真とともに掲載されています(「福島」の表記の違いはありますが、偶然にもこのブログと同じタイトルです)。

桜好きにとって特に嬉しいのが214カ所すべてにQRコードが付いていて、スマホで読み込むと地図が表示されること。有名どころはもちろん、知る人ぞ知る穴場スポットにもすべて地図があるので、桜めぐりのガイドブックとしてとても重宝します。

「どんな本が出ているか事前にいろいろ調べたのですが、地図が載っていなかったり所在地が載っていなかったりしました。この際、あったら便利だなと思う本を自分で作ってしまおうと考えたんです」と酒井さんは笑います。

東日本大震災やコロナ禍の影響で観光客が減ってしまった福島県に、再び賑わいを取り戻す一助になればという思いもあったといいます。

ライフワークとして20年以上撮り続ける「湖畔の桜」

酒井さんが写真撮影を始めたのは27年前。写真館を営んでいたご両親が相次いで他界した後、お父様が主宰していたアマチュア写真グループ「光彩」を引き継いだことがきっかけだそうです。

「機械音痴だし、壊すからと父に怒られるのでカメラにさわるのも怖いし(笑)、それまでは全然写真に興味がなかったんです。でも、父のお弟子さんたちに教えてもらってカメラを始め、勧められてコンテストに出したら入賞するようになり、ハマッてしまいました」と振り返ります。

福島県の桜を撮影するようになったのもご両親の影響が大きかったそう。「急逝した母の遺影に父が選んだのは、満開の桜を背景に笑っている母を父自身が撮影した写真でした。父も母もこんなに桜が好きだったんだと心を打たれたのが桜を意識するようになったきっかけですね。今も父と母の面影を追って毎年桜に会いに行っています」

名もなき桜も含めると、これまでに1,000カ所以上の福島県内の桜を撮影しているという酒井さんですが、なかでもお気に入りだと話すのが猪苗代町金田の猪苗代湖畔に立つヤマザクラの一本桜です。

「それほど大きくないのですが、形がきれいですし、湖畔にポツンと立っている姿が好きで、ライフワークとして20年以上四季折々に撮り続けています。私がしょっちゅう撮りに行っているので、写真仲間は『なみ桜』と呼んでいます(笑)」

そば畑と一本桜のコラボレーションが絵になるスポットとして写真愛好家の間では以前から有名でしたが、そばの花が咲く秋は多くのカメラマンが訪れるものの、桜の開花中に撮影に行く人は意外にも少なかったそうです。

「ここは開花が遅く、北塩原村の『桧原の一本桜』と同じころに咲きます。私は、日の出前の空が赤く染まり始める時間帯に撮影することが多いですね」

猪苗代町の「猪苗代 湖畔の桜」酒井なみさん撮影

酒井さんがもう一つお気に入りとして挙げるのは、三春町郊外の古墳の上に立つエドヒガンの一本桜「平堂壇の桜」です。

「6、7年前に知人に写真を見せてもらったときに一目惚れしました。この桜は、西の空が赤く染まる夕方に撮影するのがいいですね。それから星空も素敵です。北側からだとあまり桜の形がよくないので星が円を描くようには撮れませんが、天の川と一緒に撮影できてとてもきれいですよ」

三春町の「平堂壇の桜」酒井なみさん撮影

順光、花曇り、日の出前…桜を上手に撮影する光のポイントとは

桜をこよなく愛する酒井さんに上手な撮影のコツを尋ねると、「桜はほぼ100%が光」だと教えてくれました。

「観光写真のようなきれいな写真を撮りたいなら順光で、光が満遍なく当たって影が出ないときに撮影するのがベストです。花曇りのときもいいですね。こちらも光が満遍なく当たり、ふわっとした雰囲気で春のロマンチックな桜を撮影できますよ」

観光写真的ではない写真を狙うなら、日の出前の撮影がおすすめだといいます。

「日の出前に撮影すると、桜の花が紫色になります。時間帯によって色合いが変わってくるので、私はたくさん撮影して自分好みの紫色を選んでいます。

雨の日の桜や、花が散った後の花筏も風情があります。桜は365日、どんな天気でも撮れるんですよ」

「長い期間花を楽しめることと、地元の方の協力のおかげできれいな桜をそのまま残していただいていることが福島県の桜の魅力ですね」と話す酒井さん。この素晴らしい桜を後世に残したいという思いから、写真仲間とともに北塩原村の「桧原の一本桜」の周辺整備なども行っているといいます。

「20年間主宰してきた写真クラブ『フォト・メチエ』を2021年に解散して少し時間ができたので、今後は自分のために動きたいと思っています。『なみちゃんが歩いた撮影スポット 福島桜旅214』を作ったのもその一つですし、これからはフォトコンテストにもたくさん応募して、どこまで行けるか自分の可能性を試してみたいですね」

『なみちゃんが歩いた撮影スポット 福島桜旅214』はA5判・ 152ページで、定価2,000円(税込み)。福島県内の書店やオンラインショップで購入できます。桜めぐりのお供にとても便利なので、ぜひお手に取ってご覧くださいね。

また、三春町のいとうカメラ店フォトギャラリーで5月31日まで「酒井なみ写真展 福島桜旅」を開催しており、こちらの会場でも『なみちゃんが歩いた撮影スポット 福島桜旅214』を販売しています。4月下旬に展示作品を入れ替える予定とのことなので、三春町の桜めぐりや街中散策とあわせて足を運んでみてくださいね。

<2024年4月1日取材>