ふくしま桜旅

福島県内の桜の名所・名木を紹介します

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地域のさまざまな団体が協力して守る、樹齢400年の見事なヤマザクラ

桜の手入れを行っている保護団体や桜番付を作成している団体など、福島県内の桜にさまざまな形で関わる人を取材しました。

今回は、古殿町にある「越代(こしだい)のサクラ」の周辺整備と越代のサクラ祭りを行っている「越代のサクラ保存会」ならびに「じねんじょ倶楽部」の皆さんをご紹介します。

<目次>

2つの団体が中心となり、周辺整備とサクラ祭りを実施

越代のサクラは阿武隈高地に抱かれた古殿町の山間部、県道135号沿いの小高い丘の上に立つ樹齢約400年のヤマザクラです。福島県内に数ある一本桜の中でも遅咲きの代表格として知られ、「桜を愛するアマチュアカメラマンの会」が毎年作成している「福島県内『1本桜』番付表」では三春滝桜とともに東の横綱に選ばれている名木です。

樹高約20m、幹囲約7.1mの堂々たる姿は、間近で見ると圧倒されるほどの迫力。淡紅色の花をたっぷりと咲かせる枝ぶりの美しさはもちろん、大きな石を抱くようにそびえ立つ太い幹のつややかさも目を引きます。丘の下の花壇にはチューリップや水仙などが植えられており、桜とともに写真に収めると“春爛漫”を演出できるのも越代のサクラの魅力です。

越代のサクラは地元・大久田(おおぐた)地区のさまざまな団体が協力して周辺整備を行っているほか、見頃の時期には実行委員会をつくって「越代のサクラ祭り」を開催しています。その中心的存在が「越代のサクラ保存会」、そして「じねんじょ倶楽部」の皆さんです。

越代のサクラ保存会は、大久田地区の中でも桜に近い集落の住民によって1997年に結成されました。「越代のサクラがあるのは営林署の土地です。うちの集落に営林署に勤務している人がいて、その方が『この桜は樹齢もすごいし立派だから、集落のみんなで保存会を立ち上げよう』と声をかけて結成しました」。そう教えてくれたのは、3代目会長を務める岡部幸好さんです。

一方、じねんじょ倶楽部は大久田地区を中心に活動している地域おこし団体です。1995年に発足し、1997年からは中心団体として越代のサクラ祭りの開催に尽力しています。

「地域おこしのために何か地域の資源はないかなと考えたとき、『大久田地区には越代のサクラがある。これは他の地域に自慢できるんじゃないか。この桜をみんなで盛り上げれば地区の活性化につながるんじゃないか』という話が出て、サクラ祭りをやろうとなりました」と、じねんじょ倶楽部発起人で、前会長の佐川一男さんは振り返ります。

じねんじょ倶楽部の皆さん。前列右から2人目が佐川さん

佐川さんたちは地元の各団体に声をかけて協力をお願いし、現在はじねんじょ倶楽部、越代のサクラ保存会、大久田地区の班長会で越代のサクラ祭り実行委員会を組織して祭りを主催しています。

毎年、越代のサクラが開花する前の4月上旬には越代のサクラ祭り実行委員会の皆さんが集まり、周辺の環境整備を行っています。草刈り、駐車場のライン引き・ロープ張り、看板・のぼり旗の設置などを手分けして行い、観桜客を迎える準備を整えます。

越代のサクラ祭りは以前は5月のゴールデンウィーク期間中に開催していましたが、近年は開花が早まっていることもあり、花の見頃に合わせて流動的に開催。ステージショーや出店が楽しめるほか、夜はライトアップも行っており、観桜客や写真愛好家に好評を博しています。

今年(2025年)の越代のサクラ祭りは4月20日(日)に開催されます。プログラムや時間は古殿町のHPに掲載されているので、ぜひチェックしてみてくださいね。

 

根元の石を抱くようにそびえ立つ、つややかな幹が大きな魅力

ヤマザクラならではの淡紅色の花、形の良い枝ぶり、花壇に咲くカラフルな春の花々との組み合わせなど、さまざまな魅力がある越代のサクラ。なかでも岡部さんと佐川さんがお気に入りと話すのは「太い幹と根元の石」です。

「見てわかるように、この桜は幹がすごいですよね。幹に石がへばりついているのも他にはなかなかないと思います」(岡部さん)

「太い幹の雄大さ、堂々としている感じが好きですね。根元にうまく石を置いたようなところも気に入っています」(佐川さん)

岡部さんによると、地元の年配の人たちの中には「この桜は昔は一本じゃなかった。何本かの桜が合わさって一本になったんだ」と言う人もいるのだとか。越代のサクラの太い幹にはタテに何本もの線が入っており、複数の桜が一体となって誕生したという言い伝えが生まれたのも納得できる気がします。

観桜や写真撮影におすすめの時間帯を尋ねると、「満開でライトアップしたときが最高ですね。駐車場や広場から見上げるのもいいですが、写真が好きな方はもう少し離れたところから望遠で撮る人が多いですね」と岡部さん。佐川さんは「ヤマザクラなので白っぽい花なんですが、夕方は花の色が赤っぽくなってきれいですよ。ライトアップもいいですし、いつ見てもいいんですけどね(笑)」と教えてくれました。

ライトアップが行われるのは花が見頃の時期の3日間、時間は18時30分から20時30分です。日中とはまた違った幻想的な美しさを堪能できるので、ぜひ足を運んでみてくださいね。

 

山あいでひっそり咲いていた桜が今では地域の大切な宝に

今でこそ福島県を代表する一本桜の名木として県内外から大勢の観桜客や写真愛好家が訪れる越代のサクラですが、かつては駐車場もなく、山あいでひっそりと花を咲かせていたのだといいます。

「現在、駐車場になっているところは元々田んぼで、道路もこんなに整備されていませんでした。1回目の越代のサクラ祭りの前年に、じねんじょ倶楽部で桜のライトアップだけをやったのですが、そのとき道路に車がズラーッと並んだんです。この地区でそんなことは初めてだったので驚いて、『こんなにすごいならサクラ祭りにしちゃおう』と思い、次の年から越代のサクラ祭りを始めました」と佐川さん。

越代のサクラ祭りが始まって徐々に訪れる人が増えると、町や県によって道路や駐車場、遊歩道、花壇、広場などが整備され、現在のような美しい景観が生まれました。

ちなみに花壇にチューリップや水仙を植え、手入れを行っているのは地元の女性でつくるボランティア団体「おうぎの会」の皆さんです。大久田地区のさまざまな団体が協力し、地域全体で越代のサクラを大切に守っていることが伺えます。

岡部さんも佐川さんも、越代のサクラは地域にとってかけがえのない存在だと話します。

「越代のサクラは大久田地区になくてはならないものです。本当に自慢の桜です」(岡部さん)

「私らにとって越代のサクラは、無くすことのできない地域の宝物です。自分が住んでいる場所を紹介するときは『越代のサクラがあるところです』と言えばわかってもらえます。この姿をずっと保っていてほしいなと思いますし、私らも見守っていきたいですね」(佐川さん)

これからも大久田地区の宝として越代のサクラを大切に守るとともに、越代のサクラ祭りを通して地域を盛り上げていくつもりです。

<2024年4月7日・20日取材>

越代のサクラ
■所在地:福島県石川郡古殿町大字大久田字越代地内
■駐車場:あり
■例年の見頃:4月下旬~5月上旬
■ホームページ

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