
<この記事で紹介している紅葉スポット>
- 文知摺(もちずり)観音(福島県福島市)百人一首に詠まれた悲恋の舞台を彩る真っ赤なモミジ
- 福満虚空藏菩薩圓藏寺(ふくまんこくぞうぼさつえんぞうじ:福島県柳津町)只見川沿いの高台に建つ古刹。白壁と紅葉のコントラストは必見
- 三春大神宮(福島県三春町)参道の石段をトンネルのように覆う色鮮やかなモミジ
- 土津(はにつ)神社(福島県猪苗代町)京都から移植されたイロハモミジが境内を艶やかに染める
- 新宮熊野神社(福島県喜多方市)茅葺き屋根の吹き抜けの拝殿を見守る樹齢800年の大イチョウ
- 寳蔵寺(ほうぞうじ:福島県南相馬市)歴代の相馬藩主が紅葉狩りを楽しんだとされる由緒ある古刹
「福島県の“天空の紅葉”」と題して2回にわたり標高の高い山間部の紅葉スポットをお届けしましたが、今回はガラリと趣を変えて「福島県の紅葉が美しい神社仏閣」をご紹介します。
紅葉の記事の中で何度か書いていますが、福島県は47都道府県の中で3番目に面積が広く、県内各地に数多くの紅葉スポットが点在しています。山、高原、湖沼、渓谷、滝、公園・庭園などなど、多彩なロケーションで紅葉を満喫できるのが魅力です。
紅葉の名所として知られる神社仏閣も多く、紅葉好き&神社仏閣好き人間にとっては一挙両得でうれしいかぎり。御朱印をいただけるところもあるので、お参りをしたうえで拝受するのもおすすめです。
※記事中の見頃は例年のものです。気象条件などにより時期が前後することがありますので、最新情報をご確認のうえお出かけください。
文知摺(もちずり)観音(福島県福島市)
百人一首に詠まれた悲恋の舞台を彩る真っ赤なモミジ
行基菩薩作とされる秘仏・聖観世音菩薩像を本尊とするお寺で、福島市の文化財(史跡および名勝)に指定されています。かつてこの一帯は「信夫(しのぶ)の里」と呼ばれ、染め物「しのぶもちずり」の産地でした。その乱れ模様にちなみ、千々に乱れる恋心を表現する序詞として古くから多くの和歌に詠まれてきた地でもあります。

境内にある「文知摺石」は源融と村の長者の娘・虎女の悲恋物語を伝えており、源融の和歌「みちのくの忍ぶもちずり誰ゆえにみだれ染めにし我ならなくに」は小倉百人一首にも選ばれています。のちには松尾芭蕉や正岡子規など数多くの文人墨客がこの地を訪れ、芭蕉は「早苗とる手もとや昔しのぶ摺」と詠みました。
広い境内には数百本のモミジが植えられており、紅葉の名所としても有名です。秋が深まると文知摺石や福島県重要文化財の多宝塔、観音堂、句碑や歌碑を真っ赤なモミジが彩り、歴史と風情を感じさせてくれます。

近年、写真映えするスポットとして人気なのが境内の一画にある建物「水月庵」。大きな窓の外に立つモミジが陽の光に照らされ、床に映り込む“床もみじ”を見ることができます。時間帯と天気によりますが、磨き込まれた床が紅葉を映して赤く染まる美しい光景は一見の価値ありです。

■所在地:福島県福島市山口字文字摺70
■駐車場:あり
■例年の紅葉の見頃:10月下旬~11月上旬
■ホームページ
■MAP
福満虚空藏菩薩圓藏寺(ふくまんこくぞうぼさつえんぞうじ:福島県柳津町)
只見川沿いの高台に建つ古刹。白壁と紅葉のコントラストは必見
大同2(807)年に徳一(とくいつ)大師によって開創されたと伝わる古刹。ゆったりと流れる只見川沿いの高台にあり、文政13(1830)年に再建された本堂「菊光堂」が大岩の上で堂々とした佇まいを見せています。

紅葉の美しさで知られており、シーズン中は多くの観光客や写真愛好家が訪れます。只見川を挟んだ対岸から眺めると、赤や橙色に染まる山をバックにそびえ立つ古刹の全景をエメラルドグリーンの川面越しに望めて絶景です。
境内でぜひ足を運んでほしいのが、菊光堂から少し歩いたところにある庫裡(くり)。庫裡を囲む白土塀にモミジが彩りを添え、白壁と鮮やかな紅葉が目の覚めるようなコントラストを描きます。モミジの葉が落ち、紅葉の絨毯となる晩秋の風情も味わい深く格別です。

圓蔵寺には赤べこ伝説があり、これが会津の民芸品・赤べこの由来となったとされています。この伝説にちなみ、境内や駐車場に「赤べこファミリー」の巨大赤べこがいることもあるので要チェックですよ。春は一帯にソメイヨシノが咲き誇り、対岸から眺めると菊光堂や仁王門を桜の帯が彩る日本画のような景色を楽しめます。
■所在地:福島県河沼郡柳津町柳津字寺家町甲176
■駐車場:あり
■例年の紅葉の見頃:10月下旬~11月上旬
■ホームページ
福満虚空藏菩薩 霊巌山 圓藏寺 - 赤べこ伝説発祥の地 会津やないづ
■MAP
三春大神宮(福島県三春町)
参道の石段をトンネルのように覆う色鮮やかなモミジ
日本三大桜の一つ「三春滝桜」をはじめとする桜の名木が町内に多数点在する、言わずと知れた桜のまち福島県三春町。その三春町を代表する紅葉の名所で、街中からほど近い丘の上に鎮座しています。元禄2(1689)年に三春藩三代藩主・秋田輝季(てるすえ)が現在地に遷宮し、秋田家が代々信仰してきました。

境内には町指定天然記念物のモミをはじめ、シラカシ、イチイなど23本の木々があり、「三春大神宮の森」として福島県緑の文化財に登録されています。モミジも多く、秋になると一帯を赤や橙色に染め上げて訪れる人を魅了します。
なかでも見応えがあるのが、石段が続く参道。色鮮やかなモミジがトンネルのように頭上を覆い、圧巻です。木漏れ日を浴びて輝く紅葉は、まさに燃えるような美しさ。季節が進むと石段や参道脇の斜面に落ち葉の絨毯が広がり、さらに風情が増します。モミジの赤や橙色だけのところ、イチョウの黄色が混じっているところなど、場所によって絨毯の色合いが違うのもまた美しいものです。

こんなにきれいなのにそこまで混雑しない穴場で、ゆっくり紅葉を愛でられるのもうれしいところ。毎年見頃の時期にはライトアップも行っています。三春藩主秋田家の祈願寺だった「真照寺」も紅葉が美しいので、あわせてめぐるのもおすすめですよ。
■所在地:福島県田村郡三春町字馬場241
■駐車場:あり
■例年の紅葉の見頃:10月下旬~11月中旬
■ホームページ
三春大神宮 | Find!三春 【みはる観光協会~福島県三春町】
■MAP
土津(はにつ)神社(福島県猪苗代町)
京都から移植されたイロハモミジが境内を艶やかに染める
延宝3(1675)年の創建。徳川家康の孫で、三代将軍・家光の異母弟である会津藩初代藩主・保科正之公を祀った神社です。創建当時の社殿は戊辰戦争で焼失し、明治13(1880)年に拝殿や本殿が再建されました。
会津藩九代藩主・松平容保(かたもり)公が京都守護職を務めた縁で京都から移植されたと伝わるイロハモミジ16本が境内にあり、福島県を代表する紅葉の名所として知られています。

特に見事なのが拝殿に向かって表参道(男坂)の右手にある、傾斜がゆるやかな女坂の斜面。イロハモミジが立ち並んで天蓋をつくっており、10月下旬になると艶やかに色づきます。落葉すると真っ赤な絨毯を敷いたように斜面を染め上げ、これまた絶景です。女坂の苔むした石段を彩る紅葉も趣があり、由緒ある神社ならではの風情あふれる秋景色を楽しめます。例年10月中旬~11月中旬の17時~21時にはライトアップを実施しています。

ちなみに土津神社の大鳥居の色は一般的な赤色ではなく白色です。正之公が謙虚で控えめな方だったことから白い大鳥居を採用しているのだとか。境内には正之公と縁の深い長野県高遠町(現・伊那市高遠町)から寄贈されたタカトオコヒガン(高遠小彼岸)やソメイヨシノもあります。桜咲く土津神社もひときわ美しく、個人的には秋の紅葉と同じくらいおすすめです。
■所在地:福島県耶麻郡猪苗代町字見袮山3
■駐車場:あり
■例年の紅葉の見頃:10月下旬~11月中旬
■ホームページ
トップページ | [福島] 土津神社【公式】|こどもと出世の神さま・会津の歴史に触れる観光
■MAP
新宮熊野神社(福島県喜多方市)
茅葺き屋根の吹き抜けの拝殿を見守る樹齢800年の大イチョウ
喜多方市郊外の慶徳町にある神社で、地元では「長床(ながとこ)」と呼ばれることが一般的です。天喜3(1055)年、前九年の役の際に源頼義が戦勝祈願のために紀州熊野三社を勧請したのが始まりと伝わります。
長床とは、境内に建つ茅葺き屋根の拝殿のこと。平安時代末期から鎌倉時代初期の建築で、国の重要文化財に指定されています。平安時代の寝殿造りの流れをくんでおり、直径1尺5寸の円柱44本が等間隔に5列並ぶ吹き抜けの構造が特徴です。

長床の前には樹齢約800年といわれるご神木の大イチョウが佇んでおり、晩秋になると鮮やかに色づきます。茅葺き屋根の吹き抜けの拝殿と、陽射しを浴びて輝く大イチョウの共演は「絵になる」の一言。なかでも落ち葉が黄色の絨毯となる頃は必見の美しさです(落ち葉の絨毯が広がり、なおかつ木に適度に葉が残っている時期は短いのでタイミングが難しいのですが…)。見頃の時期にはライトアップが行われ、日中とはまた違う荘厳な雰囲気に心が震えます。

長床は靴を脱いで上がることができるので、ぜひ上がってみてください。長床の裏手の石段を上ると熊野三社の本殿があるので、こちらもお参りしましょう。参道脇の宝物殿では、国重文の銅鉢などの文化財を見ることができます。
■所在地:福島県喜多方市慶徳町新宮字熊野2258
■拝観時間:8:30~17:00
■料金:大人300円、高校生200円、中学生以下無料
■駐車場:あり
■例年の紅葉の見頃:11月中旬~下旬
■ホームページ
新宮熊野神社と長床|神社・仏閣|見る・感じる|喜多方観光物産協会
■MAP
寳蔵寺(ほうぞうじ:福島県南相馬市)
歴代の相馬藩主が紅葉狩りを楽しんだとされる由緒ある古刹
延暦20(801)年、坂上田村麻呂が東夷征討の戦勝祈願のために創建したとされる古刹です。境内には源義経の従者である佐藤忠信の妻・楓姫が植えたと伝わるカエデの木があり、推定樹齢400年のモミの木とともに「寳蔵寺の楓と大モミ」として南相馬市の天然記念物に指定されています。
江戸時代には相馬藩の歴代藩主が紅葉狩りを楽しんだといわれる由緒ある場所で、浜通りを代表する紅葉の名所として知られています。

海沿いの温暖な気候のため、紅葉の見頃は例年11月中旬~下旬。会津地方や中通りの紅葉が終わってからもまだ楽しめるのがうれしいところです。
仁王門をくぐり境内に足を踏み入れると、真っ赤に染まったカエデの美しさに圧倒されます。参道の石段や庭園、虚空蔵堂、鐘楼堂など絵になるところが多く、シーズン中は大勢の写真愛好家が訪れて賑わいます。

桜オタクの筆者にとってもう一つのお目当てが、駐車場に数本ある寒桜。ちょうど紅葉の時期にかわいらしい花を咲かせ、色づいた木々との共演を楽しめるのです。桜と紅葉を一度に見られるなんて、もう最高の贅沢ですよね。
紅葉が見頃の時期には毎年「楓姫もみじまつり」が開催され、夜はライトアップも行われます。
■所在地:福島県南相馬市鹿島区北海老字北畑20
■駐車場:あり
■例年の紅葉の見頃:11月中旬~下旬
■ホームページ
■MAP
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